工作は好きそうなのに、のりが指についた途端に席を離れる。粘土を使う活動がある放課後等デイサービスでは、参加が難しいのではと迷うこともあるでしょう。
素手で触れることを参加の条件にせず、材料・道具・担当する工程を変える方法を検討できます。まずは「何を作りたいか」と「どの触れ方が難しいか」を分け、本人が選べる形を支援先と探してみましょう。
この記事では、のりや粘土などの感触が苦手な子の工作に絞って、放デイで相談できる工夫を紹介します。以下の例は支援を検討するための案であり、FabriCoでの実施事例や効果を示すものではありません。
「工作が嫌い」ではなく、接触する条件を分けて見る
「粘土ができない」とまとめず、どの場面で手が止まったのかを確かめます。理由を言葉で説明できなくても、材料から手を引く、道具なら持つ、見ているだけならその場にいる、といった様子を手掛かりにできます。
例えば、次のように分けて支援者へ伝えてみてください。
- 材料を見る段階では近づけるが、素手で触る提案をすると離れる。
- 乾いた紙は持てるが、のりで湿った紙は持ちたがらない。
- へらで粘土を切ることは選ぶが、手で丸めることは断る。
- 手につくことより、ついた後にすぐ落とせないことを気にしている。
これらは確認の視点であって、反応だけから原因や診断を決めるものではありません。「ベタつくのが嫌?」「落ちないのが心配?」と答えを迫らず、道具や材料を見せて選んでもらう方法も考えられます。
こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインでは、感覚の特性を踏まえた環境調整等が支援内容に挙げられています。工作でも、本人の我慢だけで解決しようとせず、取り組む条件を検討することが出発点です。
活動の目的を残して、材料・道具・役割を変える
変更案を選ぶ前に、その工作で何を大切にするのかを支援者に聞いてみましょう。「飾りの配置を考える」のか、「材料を接合する方法を試す」のかで、残したい工程は変わります。
例えば、配置を考える活動なら、接着だけを大人が担当する案があります。一方、接合方法を選ぶ活動なら、本人が扱えるテープなどを候補にする案が考えられます。
| 難しい場面 | 相談できる変更案 | 残せる活動の例・確認点 |
|---|---|---|
| 指でのりを塗る | へらや筆を使う。素材に合えば両面テープに替える | 貼る位置を決める、材料を接合する。道具の持ちやすさも確かめる |
| 粘土を手でこねる | へらや型抜きを使う。成形済みの部品から選ぶ | 形の組み合わせや模様を考える。握る練習とは目的が異なる |
| 絵の具を指で広げる | 持ち手のある筆やローラーを候補にする | 色や塗る範囲を選ぶ。道具の感触も本人に確認する |
| 接着面に触れて部品を置く | 大きめの部品に替える。本人が位置を示し、大人が貼る | 構成や配置を決める。小さな道具を無理に使わせない |
| 同じ材料での制作が難しい | 紙やブロックなど別素材で同じ題材を表す | 題材を共有しつつ、制作方法を選ぶ。完成品を同じにそろえない |
これは「簡単な活動へ下げる」という一方向の比較ではありません。材料を替えることで、何を学ぶ機会が残り、何が変わるかを整理するための表です。使える材料や安全に扱える道具は、子どもの状況と事業所の準備によって異なります。
未就学の子についても、児童発達支援ガイドラインは、一人ひとりの特性に応じた支援や環境の調整を示しています。児発で相談する際にも、年齢だけで一律に決めず、本人が扱える条件から考えてみてください。
試すときは「触れたか」より「選んだ方法で取り組めたか」
いくつもの工夫を一度に加えると、どれが本人に合ったのかが分かりにくくなります。最初は、難しかった場面を一つ選び、変更する条件を絞る進め方を提案できます。
- やりたい部分を確かめる。「この飾りを貼りたい」「今日は見る」など、制作そのものへの希望を確認する。
- 変更案を見せる。「へらで塗る」「テープで貼る」と、実物で違いを示す。どちらも選ばない選択肢を残す。
- やめ方を先に決める。道具を置く、カードを示すなど、途中で中断する合図を共有する。
- 本人の様子と選択を記録する。使った材料・道具、本人が選んだ工程、やめた場面を短く残す。
途中で断ったら、その日は別の工程へ移る、見学に戻る、活動を終えるといった選択肢を用意します。「ここまでできたから、次は素手で」と、本人に知らせず接触の条件を変える進め方は避けましょう。
こども家庭庁のこどもの意思の尊重・最善の利益の優先考慮の手引きでは、言葉だけでなく表情や行動などからも意思を丁寧にくみ取ることが重視されています。言葉で「嫌」と言わなかったことだけを、続けてよい根拠にしないようにします。
記録は「粘土に触れなかった」で終わらせない
記入例としては、「素手でこねる提案には首を振った。へらを選び、切った部品の置き場所を指さしで伝えた。手に付着すると道具を置いた」のように残せます。これは架空の記入例です。
この記録なら、次回はへらを使う方法を残すこと、手についたときの中断方法を確認することを検討できます。完成したかどうかだけでなく、本人が選べた工程も支援者と振り返りましょう。
放デイには、材料の代替と断った後の対応を聞く
さいたま市周辺で工作活動のある放デイを検討するときも、作品の写真だけでは、感触への配慮までは分かりません。この困りごとに絞って、次のように尋ねると具体的な対応を確認できます。
- 「のりや粘土に素手で触れない場合、どんな材料や道具に替えられますか」
- 「本人が断ったとき、別の工程や見て参加する方法を選べますか」
- 「途中で手を拭きたいときは、どう伝え、どこで対応しますか」
- 「完成品以外に、本人が選んだ方法や難しかった条件も教えてもらえますか」
「苦手な子にも対応します」という説明だけなら、予定している工作を一つ挙げ、その活動で可能な変更を聞いてみてください。すべての材料を用意できるかではなく、難しい場合に代案と理由を話し合えるかを見ます。
手袋も候補にはなりますが、本人が装着を選ぶか、道具を操作できるかを確かめる必要があります。「手袋なら解決」と決めず、道具の変更や別素材と並べて検討するのがよいでしょう。
ものづくりやICTを使った個別的な学びを特色とするFabriCoへ相談する場合も、「工作は苦手です」だけでなく、「貼る場所は考えたいが、指にのりがつくのは避けたい」と伝えると、検討したい内容が明確になります。代替材料の在庫や当日の個別対応の可否は、事前にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
感触が苦手なら、毎回少しずつ触る練習が必要ですか?
一律に必要と考えるのではなく、本人の希望と活動の目的を支援者と確認しましょう。本記事では、触れられる量を増やすことより、材料や道具を調整して参加する方法を提案しています。感覚の特性を踏まえた環境調整は、放課後等デイサービスガイドラインにも位置づけられています。
大人が貼ってしまうと、本人の作品ではなくなりませんか?
本人が色や配置を決め、接着だけを大人が担当する方法を検討できます。ただし、大人がデザインまで決めてしまわないよう、本人が担当したい部分を先に確認してください。何を本人が選び、何を大人が手伝ったかを分けて残すと、活動の内容が伝わります。
道具を使っても嫌がる日は、見ているだけでもよいですか?
見て参加する方法を選択肢として支援先に相談できます。その際は「次は必ず触るための待機」にせず、見続ける、離れる、別の工程を選ぶことも含めて確認しましょう。具体的な過ごし方は、当日の活動と職員の体制を踏まえて調整します。
家で同じ材料を用意して練習した方がよいですか?
家庭で練習することを前提にせず、まず通所先で使った材料と本人が選んだ方法を聞いてみてください。本人が家でも作りたいと希望したら、扱い方を確認して取り入れる案があります。家庭だけで苦手を克服させる課題にしないことをおすすめします。
学校では粘土ができるのに、放デイでは断ります。どちらを基準にしますか?
できた・できないを一つの評価にそろえるより、粘土の種類、使った道具、手を拭ける場所、担当した工程を比べてみましょう。学校でできたことを理由に同じ方法を求めず、その日の本人の選択を確認して進める案が考えられます。
FabriCoへ、工作で困る具体的な場面をお聞かせください
「粘土は難しいけれど、形を考えるのは好き」「のりが手につかなければ貼ってみたい」。相談や見学では、避けたいことと、やってみたいことを一緒にお伝えください。
材料に触れることだけを目標にせず、どの工程なら本人が選んで取り組めそうかを確認する機会にしましょう。活動内容や利用については、FabriCoへの相談・見学と施設の利用方法はこちらからご確認ください。
参考にした情報
- こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)」
- こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)」
- こども家庭庁「障害児支援におけるこどもの意思の尊重・最善の利益の優先考慮の手引き(令和6年8月)」
