工作を終われず片付けに移れない子へ|放デイで作る「続きの約束」

「帰る時間になっても工作をやめられず、片付けを促すと『まだできていない』と動けなくなる」。ものづくりが好きだからこそ、通所先でも同じことが起きないか心配になるかもしれません。

まず検討したいのは、完成を急がせることではなく、「今日はどこで止めるか」「途中の作品をどう残すか」「次に何から始めるか」を本人と確かめる支援です。片付けを作品との別れにせず、続きへつなぐ手順として組み立てる方法を紹介します。

以下の手順とカードは、支援者と話し合うための編集部の提案例です。FabriCoで全員に実施している方法や、効果が保証されたプログラムを示すものではありません。

「終われない」のどこで困っているかを確かめる

同じ「まだやる」という言葉でも、確認すべきことは一つとは限りません。「時間が分からなかったのか」「作品を崩されたくないのか」「次に作れるか分からないのか」を、別々に尋ねてみましょう。

こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月)でも、支援は個々のこどもの状態や環境を把握して組み立てることが基本とされています。「切り替えが苦手」というまとめ方だけで、方法を決めないことが出発点です。

その場で見られた様子の例 確かめたいこと 話し合う調整案
終了を伝えると「今から屋根を作る」と言う 今日の作業範囲と終了の予定が伝わっていたか 始める前に、今日取り組む部分を一緒に選ぶ
作品を棚に移そうとすると強く止める 壊れることや、誰かに触られることを心配していないか 保管場所と触れてよい人を確認する
「次はいつ?」と繰り返し聞く 再開できる見通しがあるか 確定している予定と、まだ決まっていないことを分けて伝える
片付けの声かけ後、道具を持ったまま止まる 最初に何を片付けるか分かるか 「はさみをトレーへ」など、一つの動作から示す

この表は原因を判定するものではありません。本人が答えにくければ、実物を見せて選んでもらう方法も検討してください。問いかけを重ねて説明させることが目的ではありません。

始める前に「完成」と「今日の終了」を分ける

工作では、作品全体の完成と、その日の活動終了を別に設定する案があります。たとえば家を作るなら、「家を完成させる」ではなく、「今日は壁を貼ったところで保管する」と決めます。

ただし、作業量だけで終わりを約束すると、想定より時間がかかったときに困ります。活動時間の上限も伝え、「途中でも残せる」方法を先に用意しておきましょう。

終了予告は、本人が分かる形を選ぶ

時計、タイマー、写真、工程を示すカードなど、何を使うかは本人と支援者で検討します。ガイドラインは、発達障害のあるこどもへの配慮として、予定の見通しを分かりやすくし、具体的・視覚的な手段で活動の理解を支えることを示しています。根拠は同庁の放課後等デイサービスガイドライン「障害種別等に応じた配慮」で確認できます。

提案する伝え方の例は、「このあと作品を箱に入れて、その次に帰り支度をする」です。「もう終わり」だけでなく、終了後の行動まで示します。タイマーの音が負担になっていないかも、併せて確認したい点です。

選べることと、変えられないことを混ぜない

帰る時刻が決まっているなら、「まだ作る?帰る?」と、実現できない選択肢を出さないようにします。代わりに、「作品を箱に入れるのと、先に写真を撮るのはどちらがよい?」など、実際に選べる範囲を伝えましょう。

本人の意思を尊重することと、すべての希望をそのまま実現することは分けて考えます。こどもの意見を受け止め、意思形成・意思表出を支える考え方についても、同ガイドラインのこどもの意思の尊重に関する記載が参考になります。

作品を中断するときの手順と「保管・再開カード」

ここでは、紙工作の家を途中で残す場面を想定します。実際の利用者の事例ではなく、支援者との打ち合わせに使うための架空の例です。

  1. 作業を止める地点を確かめる。「今貼っている壁を置いたら、道具を戻す」と具体化します。帰り支度の時間内にできる範囲か、支援者が判断します。
  2. 作品を残す形を選ぶ。組み立てた状態で置くのか、外れやすい部品を別袋にするのかを確かめます。保管できない場合は、その制約を説明します。
  3. 次の一手を残す。「続きをする」だけでなく、「屋根に使う紙を選ぶ」など、再開時の最初の作業を記録します。
  4. 道具を戻し、帰り支度へ移る。作品の保管は大人が手伝い、本人は道具一つを戻すなど、役割を分ける案もあります。

記録は長文にする必要はありません。下のカードは文字、絵、本人が希望する写真のいずれでも作れます。

作品の保管・再開カード 記入例
今日の作品 紙で作っている家
今日止めるところ 壁を貼ったところまで。屋根はまだ付けない
残し方・置き場所 職員と一緒に指定の箱へ。屋根の紙は別袋に入れる
触ったり動かしたりするときの約束 移動が必要なときは職員が扱う。本人に伝える方法も決める
次に最初にすること 屋根に使う紙を選ぶ
再開できる予定 次の工作時間に取り組めるか、職員が予定を確認する。現時点では未確定

守れない「次は絶対にできる」という約束はしないことが重要です。予定が不明なら、不明のままにせず、「誰が、いつ本人へ知らせるか」を決めておきます。保管期限や置ける大きさも、事業所ごとに確認してください。

うまく終われなかった日は、約束のどこを直すかを見る

カードを作っても移れなかったときは、すぐに手順を増やすのではなく、どこまでできたかを支援者に尋ねます。

たとえば「道具は戻せたが、作品を箱に入れる段階で止まった」なら、次は箱に入れると作品が見えなくなることや、入れる際に壊れる心配がないかを確かめます。大きな箱に替える、置いたまま保管できる場所を検討するなど、作品の扱いから調整する案があります。

一方、終了の説明自体が届いていなかったなら、カードの項目を増やすより、作業開始前に終了の流れを実物で確かめる方法を試す余地があります。「泣かなかったか」だけで評価せず、どの支えが使えたかを見ていきましょう。

気持ちが高ぶって道具を安全に扱えないときは、作品を残す練習より安全確保を優先してください。落ち着く前に理由の説明や振り返りを求めず、その場の対応は職員と確認します。

園・学校でも工作を終えにくい場合は、場面に合わせて調整する

放デイで使えた保管方法を、園や学校でそのまま採用できるとは限りません。教室の置き場所、教材を共用する必要、次の授業までの時間など、条件を確かめる必要があります。

保育所等訪問支援では、訪問先での本人への支援に加え、職員への助言なども位置付けられています。詳しくはこども家庭庁の保育所等訪問支援ガイドラインをご覧ください。

利用している場合は、「工作から次の活動へ移る場面を見て、保管や再開の伝え方を一緒に考えたい」と、対象場面を絞って伝える案があります。訪問で確認できる内容や日程は、事業所と園・学校との調整が必要です。

よくある質問(FAQ)

タイマーが鳴っても終われないときは、鳴らす回数を増やしますか?

回数を増やす前に、本人がタイマーを何の合図と理解しているかを確かめましょう。「鳴ったら作品をどうするか」まで伝わっているかを確認し、必要なら保管手順を一緒に示す方法を検討します。

完成するまで、毎回時間を延ばしてもらうべきですか?

延長できるとは限りません。事業所の活動や帰宅の予定を確認した上で、時間内に中断できる作業量と保管方法を話し合いましょう。毎回完成できる量にする案と、未完成で残す案を分けて検討できます。

組み立てたブロックを保管できない場合はどうしますか?

崩す必要があることを、できるだけ活動前に伝えます。本人が希望すれば完成途中の写真や部品の並べ方を残す案もあります。ただし、写真があれば必ず納得できるわけではありません。保管が必要な制作物は、別の材料で作れないかも話し合ってください。

児童発達支援を利用する幼児にもカードを使えますか?

検討用の案としては、文字の記入を求めず、作品と保管箱の写真を並べる、実物を指して選ぶなどの形が考えられます。カードそのものを使うことより、本人が終了と保管の流れを理解できるかを職員と確かめてください。

見学では、どのように質問すると具体的な支援が分かりますか?

「工作を完成させないと帰り支度に移れません。途中の作品を残す方法と、保管できない場合の伝え方を相談できますか」と尋ねてみましょう。終了時の関わり、作品の扱い、職員が手伝える範囲を具体的に確認できます。

FabriCoで、ものづくりの「終わり方」も相談してみませんか

FabriCoは、ロボット・プログラミング・工作などのものづくりと、一人ひとりのペースや興味に合わせた支援を案内しています。活動内容はFabriCo公式サイトで確認できます。

さいたま市周辺で通所先を検討している方は、「作ることは好きだが、途中で終えるのが難しい」という場面も見学時に伝えてください。本記事のカードの実施可否や作品の保管条件は未確認のため、個別の対応については直接の確認が必要です。

相談・見学を希望される方は、FabriCoの施設の利用方法・相談と見学の案内をご覧ください。

参考にした情報

関連する記事

“工作を終われず片付けに移れない子へ|放デイで作る「続きの約束」” への1件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です